
駅前ロータリーに面して立地する商業ビルの計画です。ロータリー前ではあるのですが、街の色としてはなんとなく夜のイメージのあるエリアなのです。街全体としては、ベッドタウンなので、これをどう昼の明るいイメージに持っていけるかが計画のポイントでした。
新築の建物を造ると使う前に必ず消防検査と完了検査を受けるのですが、いきなり本番っていうことはできないので、通常数日前から検査対応のチェックをするんです。このプロジェクトは、商業施設であり、フルスペックの消防・防災設備を設けており、しかも駅前。当然、検査する側も鼻息荒いと予想されます。なので、チェックする段階から白髪交じりの大人がズラッと並び真剣そのものの状況なのです。まずは、消防検査対応。この検査での花形なのは、なんといっても火報連動の検査です。これ、観たことある人は分かると思うのですが、上手く連動して区画された瞬間って、ちょっと気持ちいいんですよね。現場さんもどんなもんじゃい的な感じだし。たまにうまくいかないこともあるのですが、さすがに今回は気合が違うから問題無いと思ってチェックに入りました。そして、防災屋さんが「それでは、発報しまーす」と掛け声かけると、数秒後、電源が落ち、非常電源に変わり暗くなったのですが、何故か降りるはずの防火シャッターが作動しない・・・数秒待っても作動しない・・・それ以外の照明やエスカレーターなど電気を必要とする物は全て止まった状態。ん?防火シャッターも止まっちゃったのかな?その瞬間。「電気屋ー!、どうなってんだー!」という声がかかり、急ぎ電気屋さんが調整に。しばし中断。そして、「配線が間違っていたようでした」ということで、気を取り直し、二回目の発報!今度はガガガという音と共に防火シャッターがゆっくりと降下し、ホッとしていたのもつかの間。シャッターが降りきって完了のはずが、何故か今度は、エスカレーターが止まらない・・・シーンとした中でエスカレーターだけがいつものようにグイングイン動いているじゃないですか。さっきは止まったのに今度は止まらない。まるでドリフのコントのような状況。さすがに、この状況では、すぐには治らないと判断したゼネコンが一旦検査を中止し、全体集合し、明日までに何とかするよう号令をかけることになったのです。まずは、設計事務所から、淡々と状況を説明し、検査を受けれないとオープンにどれだけ影響が出るかを説明。次に、ゼネコンの本部長さんから、とその時、いきなり100デシベルぐらいの声を張り上げ「おい!おまえら!今の状況わかってんのか!」と、一瞬空気が張り詰めた。それまでのなんとなく暗いムードが一転したのです。一般的に現場の責任者は工事長レベルで行っており、本部長は普段件場に立ち入ることは殆ど無いのですが、この時は、さすがやな、と思いました。普段、ゼネコンさんは設計事務所の前で大声を出すことは、まずないので、ちょいいい刺激になりました。そんなことも有り、夜を徹して調整したらしく、翌日の消防検査は無事完了。勢いに乗ってそのまま完了検査も無事完了。あまり大声を出すのは賛成できませんが、「真剣である」ということを伝えるとき、たまには有りかもしれませんね。でも、あの時なぜエスカレーターは止まらなかったのだろうという疑問は未だに闇の中ですが・・・