
大手企業の多角経営の一環として取り組まれた飲食店舗の計画です。繁華街から少し奥まった位置に計画するということで、雰囲気のある場所ではあるのですが、ビルの地下フロアに計画するとのこと。故に、ビューや自然光といったものは全くないことから、逆にこれを利用した世界観をどう表現するかというのがポイントとなりました。
ガラッと話が変わりますが、建築の設計というものは常に寸法との戦いです。この性から離れることはどうしてもできず、いつも数センチずらすかどうかを悩んでいます。そして、よくあるのが、どうしても納まりきらずギリギリの寸法をチョイスするのです。ギリギリなのでアウトではないのです。でも、このボーダー上の数値というのはどうしても個人差が有ります。大抵の場合、説明すれば理解してくれるのですが、この案件では、爆発でした。それは、完成間際に下見ということで料理長が来たのです。彼が気にしているのは当然厨房。なんか嫌な予感がしたので、あえて近づかず、遠くから知らんぷりしていたんです。数分後。厨房から怒鳴り声が・・・そして、つかつか近づいてきて、あんな狭いところでどうやって作るんだっ!というんです。近くにいた総マネージャーも大慌て。まーまー落ち着いて、となだめるんですが、料理長は変わらず。そのまま帰ってしまいました。計画の事情は知らないんでしょうがないのですが、50坪弱のところに50席取る必要があり、しかもバーカウンターも設けているので、必然的にしわ寄せが厨房に行くのは当然。総マネージャーが、後でボクから説明しておきますんでとその場は一旦終了。その後、プレオープンが有り、グランドオープンへと続くのですが、当然何度も顔を合わせるんです。そして挨拶すると、いつも、なんかさー、最近自分が小さくなった気がするんだよなー、っと言われるのがお決まりのパターン。そんなことをしながら、グランドオープンへ向けて微調整を繰り返し、なんとか最後は手を差し伸べてもらえたので、ホッとしました。飲食店はなんだかんだ言っても主役は料理ですからね。これ以降、厨房を設計するときは、料理人にとって気持ちのいい空間を提供するようにしています。あとが怖いし・・・